疑問49 増刷の意味 その1
本の最後あたりに発行日が書かれているページ(奥付)があります。
奥付には「版」(増刷の歴史)が記載されています。
消費者が、ある本が第何刷かを確認する理由があるとすれば「売れ具合」をチェックすることでしょう。手にしたAという本が第2刷で、Bが第6刷だった場合、Bの方がよく売れていると判断できそうです。発行日が同じなら。
その判断は間違っています。
売れ具合を判断する要素は増刷回数ではありません。正確には「増刷回数だけではない」という意味です。いくつかの要素のうち、売れ具合を判断する最も強力なものは、もちろん「1回あたりの印刷部数」です。本の印刷部数を知ることができる消費者は少ないですが、増刷回数は判断材料として(不適切ではないものの)弱いです。
TOEIC市場を例にすれば、Aの初版部数が7,000で、第2刷が12,000ならヒット作品である可能性が高い。初版(7,000は不自然な数字ではありません)より第2刷の数字が大きいからです。モノを作って売る仕事をすればよく理解できますが、作っても売れるかどうかは誰も知りません。ましてや、TOEIC市場では「本の寿命」は短いので、時間が過ぎれば過ぎるほど増刷に伴うリスクが大きくなります(ヒット作として地位を確立した本は、クオリティに関係なく売れやすい傾向があるのでリスクは相対的に下がっていきます)。
初版でそれなりの数を印刷し、第2刷の印刷部数が初版を超えているなら、版元の「強気の姿勢」が反映されています。強気の根拠は「初版の売れ行きが良い」ことです。それ以外にはありません。印刷はコストですから。よって、実は「増刷回数が少ない」ことこそ、たくさん売れている証拠である可能性もあるのです(実例を知っています)。
一方、Bの初版がAと同じ7,000部だとして、第2刷が3,000部、第3刷から第6刷は2,000部ずつかも知れません。不思議な現象ではありません。返品リスクを抑えるため慎重な意思決定をすれば起きることです。合計すると18,000部。1回しか増刷していないAは19,000部ですから、増刷回数を根拠に売れ具合を判断できないことが分かります。
別の見方も可能です。
Aは第2刷でドカンと刷っていますが、それが実際に売れるかどうかは不明です。ところが、版元が「第6刷を出す」と決めた時点で、Bはすでに5回も印刷されてきたのですから「実際に売れる本だ」と証明されているわけです。この場合、判断材料は印刷部数ではなく「実売部数」です。よって、増刷回数の多いBの方が「売れた数」が多いと言うことができます。
いずれにしろ、増刷回数は売れ具合を判断する根拠として適切とは言えません。
実は・・・
それ以前に、もっと基本的なレベルで考慮すべきことがあります。(続く)
最近(2008年3月)、「直前の技術」(第6刷)と「直前模試3回分」(第2刷)の増刷が決定したので思いついたトピックです。前者の初版は印刷部数が大きく、第2刷から第4刷は少なめでした。Bパターンです。でも、第5刷だけで「第2刷から第4刷の合計」に近い印刷部がありました。
奥付には「版」(増刷の歴史)が記載されています。
消費者が、ある本が第何刷かを確認する理由があるとすれば「売れ具合」をチェックすることでしょう。手にしたAという本が第2刷で、Bが第6刷だった場合、Bの方がよく売れていると判断できそうです。発行日が同じなら。
その判断は間違っています。
売れ具合を判断する要素は増刷回数ではありません。正確には「増刷回数だけではない」という意味です。いくつかの要素のうち、売れ具合を判断する最も強力なものは、もちろん「1回あたりの印刷部数」です。本の印刷部数を知ることができる消費者は少ないですが、増刷回数は判断材料として(不適切ではないものの)弱いです。
TOEIC市場を例にすれば、Aの初版部数が7,000で、第2刷が12,000ならヒット作品である可能性が高い。初版(7,000は不自然な数字ではありません)より第2刷の数字が大きいからです。モノを作って売る仕事をすればよく理解できますが、作っても売れるかどうかは誰も知りません。ましてや、TOEIC市場では「本の寿命」は短いので、時間が過ぎれば過ぎるほど増刷に伴うリスクが大きくなります(ヒット作として地位を確立した本は、クオリティに関係なく売れやすい傾向があるのでリスクは相対的に下がっていきます)。
初版でそれなりの数を印刷し、第2刷の印刷部数が初版を超えているなら、版元の「強気の姿勢」が反映されています。強気の根拠は「初版の売れ行きが良い」ことです。それ以外にはありません。印刷はコストですから。よって、実は「増刷回数が少ない」ことこそ、たくさん売れている証拠である可能性もあるのです(実例を知っています)。
一方、Bの初版がAと同じ7,000部だとして、第2刷が3,000部、第3刷から第6刷は2,000部ずつかも知れません。不思議な現象ではありません。返品リスクを抑えるため慎重な意思決定をすれば起きることです。合計すると18,000部。1回しか増刷していないAは19,000部ですから、増刷回数を根拠に売れ具合を判断できないことが分かります。
別の見方も可能です。
Aは第2刷でドカンと刷っていますが、それが実際に売れるかどうかは不明です。ところが、版元が「第6刷を出す」と決めた時点で、Bはすでに5回も印刷されてきたのですから「実際に売れる本だ」と証明されているわけです。この場合、判断材料は印刷部数ではなく「実売部数」です。よって、増刷回数の多いBの方が「売れた数」が多いと言うことができます。
いずれにしろ、増刷回数は売れ具合を判断する根拠として適切とは言えません。
実は・・・
それ以前に、もっと基本的なレベルで考慮すべきことがあります。(続く)
最近(2008年3月)、「直前の技術」(第6刷)と「直前模試3回分」(第2刷)の増刷が決定したので思いついたトピックです。前者の初版は印刷部数が大きく、第2刷から第4刷は少なめでした。Bパターンです。でも、第5刷だけで「第2刷から第4刷の合計」に近い印刷部がありました。
Comment
前田先生、
あーひゃです。初めてコメントいたします。
わたしは割と版を見る方です。というか、出版日をチェックするときに
自然と目に入ってきます。そして「売れてる度」と判断してしまいます。
でも確かに、冷静に考えれば分かることなのですよね。
数字のトリックです。続きを楽しみにしています。
あーひゃです。初めてコメントいたします。
わたしは割と版を見る方です。というか、出版日をチェックするときに
自然と目に入ってきます。そして「売れてる度」と判断してしまいます。
でも確かに、冷静に考えれば分かることなのですよね。
数字のトリックです。続きを楽しみにしています。
あーひゃ | 2008/03/10 6:14 AM
あーひゃさん、
初コメントありがとうございます。続きをお楽しみに!
初コメントありがとうございます。続きをお楽しみに!
前田 | 2008/03/11 1:23 AM
⇒ ken (08/25)
⇒ 前田 (08/25)
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⇒ 西嶋 (02/28)
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